「兵庫を制する者は全国を制する」この言葉を聞いたことがあるという方は、駅伝ファンの中には多いのではないでしょうか。
全国高校駅伝で、毎年のように上位へ食い込んでくるチームを送り込んでくる兵庫県代表。
特に同県内の男子の部で繰り広げられる西脇工業高校と、報徳学園高校の熾烈な代表権争いと、全国高校駅伝での活躍を表して生まれた言葉です。
2022年の全国高校駅伝での兵庫県代表となった西脇工業は男子が6位入賞、女子も20位と健闘しています。
今回はその西脇工業男子にスポットライトを当ててみたいと思います。
西脇工業の駅伝の監督は誰?
西脇工業の監督を務めるのは、足立幸永(あだち こうえい)さんです。
1963年兵庫県多可郡多可町の生まれで、ご自身も西脇工業の卒業生です。
日本体育大学に在学中は、箱根駅伝を走るなどの活躍されていました。
1996年に西脇工業に赴任し、陸上競技部のコーチとして、指導者のキャリアをスタートさせます。
当時の西脇工業で監督を務めていらっしゃったのは渡辺公二さん。
1968年に西脇工業の監督に就任以後、全国高校駅伝では、実に8回もの優勝を成し遂げ、同校を一躍全国強豪校へと押し上げた名伯楽でもあります。
2009年にその渡辺さんが退任したのに伴い、コーチの足立さんは監督に就任し、現在に至ります。
前任の渡辺さんの実績が凄まじいものがありますので、後を受け継いで指導を務めるのは容易ではありません。
常に前任者との比較が付いて回り、結果を求められるものです。
そんな中でも、足立さん率いる西脇工業は全国高校駅伝に出場を続け、最高成績も2位を2回と、頂点まであと一歩に迫る実績を残しています。
指導に際しては、渡辺さんが残したものを受け継ぐところは受け継ぎ、時代に合わせて変えるところは変える、という柔軟なスタイルを取っており、そこが今日までの戦績に繋がっていると言えます。
西脇工業は、筆者である私が子供の頃から練習量が少ないことで知られています。
高校で伸びきってしまうのではなく、将来を見据えて伸びしろを残した指導をしている点は渡辺さんの特徴でもあり、足立さんが監督に変わっても受け継がれている、いわば伝統みたいなものです。
そこに足立さんは、練習で独自にラダーを使った動きづくり、ドリルを導入したり、体幹トレーニングを意識してクロスカントリーを取り入れたりするなど、変化を加えてご自身の色を出すようになっています。
指導は前任者の真似事では務まりません。
足立さんは、渡辺監督のスタイルにご自身のスタイルを加えることで、指導者としての足場を固めたと言えるでしょう。
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西脇工業の駅伝での歴代優勝回数は?
西脇工業の全国高校駅伝優勝回数は8回です。
この数字は、全国高校駅伝の歴史の中でも第2位となる記録です(1位は世羅高校の11回)。
西脇工業は1982年に初優勝を果たすと、平成に入ってから2002年(平成14年)までの間に7回の優勝を記録。無類の強さを誇りました。
2年に1回は優勝しているペースなので、これは本当に凄い記録です。
そんな西脇工業でも、毎年連続で兵庫県代表になっていたのかというと、実はそうではありません。
冒頭でご紹介した通り、報徳学園がライバルとして立ち塞がることも多々あり、その報徳学園もまた、全国高校駅伝では7回の優勝を数えます。
「兵庫を制する者は全国を制す」の言葉通りの力を見せつけていますね。
当時は西脇工業を渡辺公二さんが、報徳学園を故・鶴谷邦弘さんが、監督として率いていた時代。
他県なら文句なく全国高校駅伝に出場するだけの記録を出しても、兵庫を突破することが出来ないハイレベルな争いを、毎年のように繰り広げていました。
また、5年や10年ごとの記念大会では、兵庫で敗れても、近畿大会で必ず代表権を獲得するなどの勝負強さを見せてきました。
強烈なライバル関係にあったと思われる両校ですが、渡辺さん、鶴谷さん、共にお互いの存在があったからこそのライバル関係だったことを口にしています。
こちらの神戸新聞の記事には渡辺さん、鶴谷さんが笑顔で握手を交わしている写真もあります。
いつの時代もこうしたライバル関係がお互いを高めていくのでしょう。
西脇工業の活躍に報徳学園の存在が欠かせないことは間違いありません。
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西脇工業の陸上部の進路はどんなところがある?
そんな全国でも無類の強さを誇る西脇工業には、当然のように毎年有望な選手がいて、卒業後の進路も毎年気になるところです。
どのような進路があるかというと、箱根駅伝を目指すために関東の大学へ進学する選手もいれば、関西圏の大学に進む選手、あるいは大学へ進学せず実業団へと進む選手と多岐にわたります。
私が高校生だった頃の西脇工業の駅伝優勝メンバーは、複数が実業団の旭化成に就職した、ということもありました。
この時も、箱根駅伝だけが選択肢ではないということを、選手が示していたように思います。
今年もエースの長嶋幸宝選手が旭化成に進みますね!
どんな活躍を見せてくれるか楽しみです。
ちなみに、西脇工業出身の日本代表選手というと、世界陸上のモスクワ、北京大会でマラソンに出場された現在中央大学の監督を務める藤原正和さん(中央大学→Honda)がいらっしゃいます。
男子選手でオリンピックの代表になった卒業生はまだいないので、今後はそこにも注目したいと思います。
女子の卒業生では、天満屋に進んだ山口衛里選手がシドニーオリンピックのマラソンで、同志社大学に進んで豊田自動織機TCに所属されていた現プロランナーの田中希実選手が東京オリンピックの1500mで、それぞれ日本代表として活躍されています。
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西脇工業高校まとめ
前任の渡辺さんから足立さんまで、長きにわたってこの強さを継続するのは並大抵のことではありませんね。
それでいて、練習量は抑えて選手に将来の伸びしろを残している点は、見事としか言いようがありません。
選手のことを考えての指導が出来るからこそ、選手も集まってくるでしょうし、強いチームを作り上げることが出来るのでしょう。
時代に合わせた足立さんの指導も魅力です。
そしてライバル報徳学園の存在。
最近では須磨学園も台頭し、ますます激しい県内での代表権争いが繰り広げられることと思います。この戦いも注目ですね。
渡辺さんから足立さんへの見事なタスキリレーともいえる西脇工業の歴史。
今後も大いに高校長距離界を盛り上げてくれる存在になるでしょう。